さて、翌日の昼のことだ。
俺は階段を降りていた。一歩一歩、音を筋で吸収させるようにして・・・。
よく怪しいと言われるが、俺にとってそれは、毎日を安全に過ごすための知恵であり、
欠かせないことであった。
パサッ。どうやら前を歩いていた人が物を落としたらしい。
実際はそんなことが浮かぶ前に体が動いていた。
先ほどの音の原因らしい、床に落ちた書類をまとめ、上下と表裏を確認し、調整。
それを自分でも驚くほどいつの間にか、やっていた。
「ありがとう。」相手は女子だったらしい、快活な声が聞こえた。
彼女が顔をあげた。
端整で健康で積極的な顔がそこにあった。
何でもない、大したことない、返事ならいろいろあるが、そんな言葉は自分に不釣合いで、嘘をつく気がしてならない。
俺は何も言えず、その場を去るしかなかった。
視界の大半を階段の次の段が占めていた俺には見えなかった。
しばらく考えるようにして、やがて両端を吊り上げたその唇を・・・。
俺は階段を降りていた。一歩一歩、音を筋で吸収させるようにして・・・。
よく怪しいと言われるが、俺にとってそれは、毎日を安全に過ごすための知恵であり、
欠かせないことであった。
パサッ。どうやら前を歩いていた人が物を落としたらしい。
実際はそんなことが浮かぶ前に体が動いていた。
先ほどの音の原因らしい、床に落ちた書類をまとめ、上下と表裏を確認し、調整。
それを自分でも驚くほどいつの間にか、やっていた。
「ありがとう。」相手は女子だったらしい、快活な声が聞こえた。
彼女が顔をあげた。
端整で健康で積極的な顔がそこにあった。
何でもない、大したことない、返事ならいろいろあるが、そんな言葉は自分に不釣合いで、嘘をつく気がしてならない。
俺は何も言えず、その場を去るしかなかった。
視界の大半を階段の次の段が占めていた俺には見えなかった。
しばらく考えるようにして、やがて両端を吊り上げたその唇を・・・。