「なあ、落谷。」
また隣の能天気野朗のちょっかいだ。
「あのなあ。」毎度のごとく同じ文句で追い払おうとする。
「女には優しいんだなあ。」
?。
「何のことだ?。」
奴はのんきな顔のまま、「とぼけんなって。」
そして、「昼休み、黒石 ユリに手を貸してただろう。」
「誰そいつ?。」

「えぇ?。」

「いや、だから誰そいつ?。」

「えぇ!?。」まさしく、すっとんきょな声とはこのことだ。

どうやら俺は外しちゃならない常識を外しちまったらしい。
「知んねえの?黒石 ユリ?。」

「だからどういう奴だそれは?。」
彼の口調を混ぜて言うと、めっちゃ美人で運動ヤバくて、成績ダントツ!。
(言わせてもらうと俺は中の上だ。)
でも、可愛すぎてみんなの宝石にしようんなって。
お前なあ、無意識とはいえ、何故彼女をモノにする?、
そういうことだから、俺らは嫌われるんだよ。
S氏の作品読め!その作家の書いた暖かい、時としては自分の中にある暗い部分を突きつけるその内容が頭をよぎる。
そんなS氏ワールドに入った俺をまた声が呼び戻す。
「それにそいつ席、となり。」
見たが、本人は不在。
別にかまととぶっているのではない。
俺の視界を占めるのは、床、黒板、外、強いていうならお前を含む男子の顔(今のところお前ひとり)。