騒がしい夜の歓楽街。
一人の少年が遊郭の屋根から街を眺めていた。
艶やかな黒髪と、紅の大きな瞳が印象的な
美しい少年だ。
「うっしゃあ!!暴れるぜぇー」
「……咎、待て…こら!」
咎(トガ)と呼ばれた美少年は
長い黒髪の、咎と良く似た容姿の青年の声を無視して
屋根から飛び降りた。
大きな黒光りする鎌を掲げて―。
「おぉりゃぁぁぁ!!」
たちまち街に黒煙が上がり
その中から咎が出てきた。
持っている鎌には血が付着している。
「待てぇ!」
「誰が待つかよ」
「咎、来い!」
「兄貴!」
咎の名を呼んだ青年は、咎の兄らしい。
彼は咎を目立たない路地裏に引き入れると
紫の球を街に投げ込んだ。
一気に紫の煙りが立ち上がり
街全体を包み込んだ。
「咎、よくやったな。刹もお手柄だ」
大きな鷹の背に乗って
咎と咎の兄…刹(セツ)に振り返った翡翠色の瞳の青年。
これまた美しい容姿だ。
.