立ち止まった場所から、目を凝らして横たわる彼女の姿を見つめてみる。
 ド近眼な俺には、少し離れた場所に横たわる彼女の姿は眼鏡を通してでさえ若干ボヤけて見える。
 しかし、ボヤけているとはいえなだらかに描かれる曲線は、どう見ても――人間の女性そのものである。

 『ひょっとして何かの荷物と人間とを見間違えてしまったのでは?』という俺の内に潜む淡い期待は――この時点で儚く打ち砕かれてしまっていた。

 俺の部屋の中で、どうした理由があるのか分からないが横たわっている彼女は、何故か全裸で横向けの姿勢で寝転んでいる。
 俺の位置からは彼女の顔は確認出来ない。
 この場所から、俺の視力の範囲内で確認出来るのは、『部屋に横たわっているのが間違いなく人間である』という事と、横向けに寝転んでいても分かる胸の辺りから少しだけ見えている膨らんだ胸に、そこから腰に至るしなやかなライン、桃のような形をした白いヒップに細く長い脚……これらの情報から『寝転んでいるのは女性である』という事だけなのだ。