「あなた、名前は?どこから来たの?」

お母さんと呼ばれた女の人が聞いた。

でも、わたしはわからなかった。


自分が誰なのか、まるで生まれたての赤ん坊のように、わからない、と言うより、知らなかった。


その問い掛けの答えを探そうとすると、何故か涙があふれた。


わたしを心配そうに見ていた二人の女性は、わたしが記憶喪失だとわかったのだろう。


顔を見合わせて、しばらく無言だった。