拓也の言葉はあの時のわたしにはすごく意地悪に聞こえた。

拓也は別にからかいの気持ちなどはなくて、純粋に記憶がないのが不思議だったんだと思う。


「あー、拓也君がヤヨイちゃん泣かした!」

後ろの席の女の子が叫んだ。

わたしは別にその時泣いていなかったと思うのだけど、拓也の質問に答えられなくて、悔しさに顔が真っ赤になっていたのは確かだと思う。


「泣かしてないよ!」

「せんせーい、拓也君がヤヨイちゃんを泣かしたよ!」

「泣かしてないってば!」

拓也と女の子が言い争っていたのを今でも覚えている。