私はレースの事はよくわからない。

でも、実況の声で。

祥ちゃんがレコードタイムを出したのがわかった。

サーキット全体に驚きと興奮の声が響く。



この予選は暫定1位。

若い頃に見たどことなく頼りない祥ちゃんはここにはいない。

常に自信に溢れた走行でファンを楽しませている。

予選が終わり、各ライダーがゆっくりヘアピンに差し掛かった。

祥ちゃんはシールドを上げると私達の位置を確認する。

「おじちゃ〜ん!!」

翔は祥ちゃんの名前を知らない。

嬉しそうにそう叫んでフラッグを振ると。

祥ちゃんも手前から更にゆっくりと走って手を振ってくれた。

そして目の前で…

ウィリー!!



他のお客さんも大喜びだった。