「え…あぁ、うん…」

梓はあまりこの事には触れられたくないように下を向いて頷いた。

「…そういう時に、電話してこいよ」



拒否はさせない。

絶対に電話してこい。



俺はそう思って梓を見つめた。



「うん…わかった」

梓が頷くのを見てから翔くんを下に降ろす。

「おじちゃん、また会える?」

無邪気な笑顔を向ける子供に。

罪なんてない。

「うん、また会おう。
…そうだ、今度、俺が出るレースに来る?
招待するよ?」

「ホント?」

目を輝かせる翔くん。

「じゃあ、またママにチケット送るから。
2人でおいで」

俺はそう言って手を振った。

「うん、ありがとう!」

本当に嬉しそうに手を振り返す翔くん。



俺は適当に手を振って、みんなの元へ帰っていった。