「翔?」

梓がじっとこちらを見つめて車に乗り込まない翔くんを見つめて、首を傾げている。

「おじちゃん!」

翔くんはニッコリ笑うと俺の元へ駆け寄ってくる。

俺は何とか作り笑いをして翔くんを抱きしめ、そして腕に抱き上げた。



「祥ちゃん…」

梓は信じられない、という顔で俺を見つめている。

「梓、ケータイ、すぐに出せる?」

俺は翔くんを抱いたまま、梓に聞いた。

梓は頷いて俺にケータイを差し出す。

左手でそれを受け取ると二つ折りのケータイを開いて俺の番号を打った。

1コールだけ、鳴らして切る。

「…今、俺の番号を入れた。
もし何かあれば、連絡してこい」

そう言って梓にケータイを返す。

驚いた様子で梓は俺を見つめている。

「祥ちゃん?」

俺はそのまま梓の右腕を掴んでカーディガンの袖をめくり上げた。

「…これ、自分で転んだわけじゃないよね?」

右腕に打撲の跡。

お昼休憩の時にちらっと見えた傷痕。