「祥太郎は…」

俺の腕の中で雪野は呟いた。

「好きな人、いないの?」

「目の前にいる人」

即答した。

雪野は冷たい笑みを浮かべて

「…私はただのはけ口でしょ?」

そして続けた。

私もあなたはただのはけ口。

本当にこういう事をしたいのは…



あの人なの。



でも叶わない。





あの人も、そう思ってくれるけど、叶わない。

望めば可能だけど。

犠牲は大きいの…






そう言って彼女の瞳からこぼれ落ちた涙は。

ゾッとするくらい綺麗だった。