この部屋の暑さ。

扇風機の風。

そして梓の体温。



全てが。



心地良かった。






常に張り付けている重い鉄の鎧甲を。

剥がされて。

ようやく素の自分をさらけ出す。



梓は時折、俺の髪の毛を撫でてくれた。







バイクで得た栄誉も名誉も。
みんなの賞賛も。

ここでは何の役にも立たない上辺だけの話。

世の中、肩書や上っ面だけで人を判断するけど。

本当にそれが幸せなんだろうか?

本当の幸せって。

日常の些細な出来事、例えば大好きな人と手を繋いだり、些細な話で大笑いしたり。

そういうのが幸せであって。

肩書などはそりゃ、あればいいけど。

でも、些細な感動を忘れてはいけないね。





今の俺は。

本当に幸せだと思う。

ようやく手に入れた、当たり前であって当たり前ではない幸せを。

しっかりとこの手に握りしめる。