一応、隼人にばれては困る。隼人の行いを簡単に許すつもりは無かったが、彼を失いたくはなかった。

車はやがて埠頭を走り、岸壁の端にとまる。あたりには飲食店どころか人影すら無い。

ここに来てようやく晶は、真左人に対して警戒心を抱き始めた。

「真左人……?」

真左人は答えない。何か考えているようだ。

「どうしたの真左人?」

もう一度呼びかけた言葉が終わらない内に晶はいきなり抱きしめられた。

「……!」

突然の事に驚き声も出ない。

なんとか必死で手ではらいのけようとするが、思いのほか力が強く、真左人は唇を晶の首筋に這わしてきた。

手が胸を鷲づかみにする。

「嫌っ!止めて離して!」

右手を真左人の顔との間にこじ入れ何とか顔を引き離す。