拓海は必死に逃げていた。

何故か自分の体が子供になっている……これではアイツに絶対勝てない。

捕まればどんな酷い仕打ちを受けるか。考えただけで鳥肌が立つのが分かった。

立ち上がっても胸から上が机の上にようやく出る程度だ。どう考えても小学生の体である。

もちろん拓海はこれが夢だと分かっていた。

この夢を見るのも一度や二度ではない。だが金縛りにあった様に動けず、ひたすら机の陰で震えた。

(アイツは死んだじゃないか……酔って階段から……もう俺達を脅かす物なんか無いのに)

「……大丈夫?ねえ拓海さん?」

夢の中で思った言葉が自然と口から出てしまったのか、汗だくの拓海を妻の利那が心配そうに覗き込んでいた。

薄いモヤが晴れるように徐々に焦点が合う。