「それから晶を助けてくれて有難うな。またあいつが困ってたら頼むよ」

たった一人の妹の兄として拓海は頭を下げた。

「あれは運がよかったよ。たまたま通りかかったんだ。そう考えたら今度の事件も良かったのかもしれないな。俺が通りかからなきゃ、あんな事件に巻き込まれなくても済んだかもしれないけど、そうなら晶ちゃんを助けられなかった。本当に良かったよ」

妹を助けたせいで雄大が妙な事件に巻き込まれた事に拓海は申し訳なさと感謝を感じながら黙って歩いた。

そしてそんな二人の姿を影から凝視する目があった。



利那である。



せっかくの二人だけの夕食。

それを食べ終わらず、ろくな会話もない内に呼び出された拓海。

ただ出かけてくるとだけ言い残して席を立った夫に最初は女の影を感じ、利那は必死で後をつけた