「あれえ、お兄ちゃん又来てるの?」

「又は無いだろ、せっかく来てやったのに」

言葉とは逆に嬉しそうな晶を見て利那は微かな嫉妬を覚えた。結婚して一ヶ月たつと言うのに何故拓海が自分を選んだのか、よく分からない。

拓海の父親は十年以上前に事故で亡くなったらしいが、ここの家族は明るく、そのような影は微塵も見られなかった。

拓海の母、貴子は30代半ばに見えるほど美しく、また義妹の晶も利那からみてハッとする程愛くるしい。

この二人と共に育った拓海が十人並みの自分と何故結婚したのか……。無邪気に拓海にじゃれつく晶が利那には自己嫌悪になるぐらい、うっとうしかった。

利那は本当は嫌なのだが、こうやって夕食を隣家でとる事は少なくなかった。

実際には食事代等の面から助かる事は助かるのだが、質素でもいいから拓海と二人で過ごすほうが楽しい。

今日の夕食はハンバーグと手巻き寿司である。北條家の夕食に食べ合わせという言葉は無いらしい。一昨日は確か焼肉と天ぷらだった。