「どして真澄がお願いするの?変なの」

「だって晶がかわいそうじゃない」

「大丈夫よ、今日はたまたまだから。もう会わないって」

講義開始のベルがなったので話を終わらせる早希をまだ疑いの目で見ていた真澄だったが諦めて口を閉ざした。

真澄とて隼人に憧れの気持ちが無かった訳ではない。

サッカー部のスター隼人はみんなの憧れだったのだ。

しかし親友の晶が隼人と交際する事になったと聞いた時は自分の事のように嬉しかったし、酒乱の父親を事故でなくした晶の境遇を知っている真澄は、彼女に幸せになって欲しかった。

極度の近視でメガネが手放せない真澄はファッションにも無頓着で可愛い晶には最初から対抗意識も無かったし、美人で派手な早希が何故、晶の恋人にちょっかいを出そうとしているのか分からなかった。

恋人が欲しいとか思った事もあるが、今は晶達とカラオケに行ったりする方が楽しいし、将来は弁護士になりたいという夢もあった。決して裕福ではない境遇では都会の大学で一人暮らしをするのは到底不可能な為、地元の蓬莱学園大学に通っているが一応法学部である。

真澄の父、成一は長距離トラックの運転手だった。