いつものようにはにかみながら微笑む拓海を見て、利那は彼が幸せなのを確信した。

(よかった……本気で好きになる前で)

自分ではそう思ったつもりでも、家に帰り一人になると溢れる涙が止まらない。

一晩中泣き明かした利那は次の日熱を出して学校を休んでしまった。

そして学校が休みの今日、昼過ぎに突然拓海が利那の家を訪れたのである。

「風邪ひかれたと聞きまして……その……体調どうですか?目が赤いですよ。熱が未だあるんじゃないかな」

利那の部屋で律儀に正座したまま照れた様に笑う。

利那の両親は自殺未遂依頼、極端に神経質になり何かに付け利那を干渉したり過保護にしたりと目障りだ。

その母が作り笑いを浮かべながら紅茶とケーキを持って入ってきた。

「先生わざわざすいません、なんだか急に寝込んじゃって」

「余計な事言わなくていいわよ、早く出てって」

なおも未練がましそうにする母を部屋から追い出す。