拓海が死んだ火事以来、不思議と隼人に対する恐怖心は消えていた。
やはりあの時、隼人は自分を守ろうとしてくれたのだ。
もう事故の夢を見ることもない。今は全てが平穏だった。

真澄は何か知っているようだったが晶から聞く事はない。
彼女も言いたければ言うだろうし、黙っているという事は晶が聞くべき問題ではないのだろう。

今目の前に、にこやかな表情で座る真澄は胸にどんな苦しみをしまい込んだのか……少し気にはなるが相変わらず真澄は何かにつけ晶の面倒を見てくれた。

「こぼさないでよ」

隼人と話しながらお茶を飲む晶に母が注意する。ごく普通の幸せな光景だ。

雄大は学校を辞めた。拓海が死んで何か考えるものがあったのだろう。

3年前に引退したレスリングを再び始め、今は東京で全日本の強化合宿に行っている。