しかし意識ははっきりしていた。
心は平穏だった。

願わくは真澄が黙っていてくれれば……

しかし、そんな事はもうどうでもいい。
自分は晶を守ったのだ。
暴力をふるう父から、連れ去ろうとした沢崎映一から、暴行しようとした男から、そして晶を悲しませた早希から……。

部屋のドアが崩れ落ち炎が一気に部屋に押し寄せる。
その中に父の姿が見えた。

熱い……体が燃える……。

(父さん、今行くよ……ごめんな突き飛ばして)

あの日のように、拓海は父の胸に抱かれたような気がした。

そして業火に体を包まれながら動かない筈の体で、拓海は狂ったように笑い声をあげた。