名前も知らない人間相手という事が逆に、機械に向って話しているような錯覚を覚えたのか晶は次々とプライベートな悩みをタクヤ達に相談し始めたのだ。

拓海もだんだんと空想と現実の境目が分からなくなってきていたのも事実である。

20過ぎの男になりすまし、架空の人物を演じている内に、いつしか拓海はタクヤに、そして真左人になっていった。

今から思えばタクヤ達になりすました拓海は空想の世界で晶ではなく「マリコ」に恋していたのかもしれない。

そしてとうとう拓海は人を殺してしまったのだ。

殺すしかなかったし殺されて当然の男だと今でも拓海は思っている。

沢崎映一……ニュースに出るまで名前すら知らない価値の無い男だ。
こともあろうか晶を強引にナンパし怖がる妹の腕を掴んで連れ去ろうとしたのだ。

あの時は偶然、雄大が居合わせてくれて事なきを得たが、許すわけには行かなかった。