やがて「晶を守る」という義務感にも似た気持ちは凶暴にエスカレートしてしまった。

常に晶から目を離さず、時間の許す限り妹を影から見守った。
しかし年頃になるにつれ当然のように晶は兄から離れていく。

そこで拓海は一線を越えてしまった。
晶を守るために仕方がないと自分を正当化してはいたが、拓海は妹の日記や携帯のメールを盗み見するようになったのだ。

そんなある日、拓海は妹が携帯を使ったインターネットサイトでのチャットに「マリコ」という名前で夢中になっている事を知る。

だんだんと兄から自立していく晶に対して拓海がとった行動は晶のチャットの相手になりすます事だった。

複数の携帯を使い「タクヤ」「真左人」の名前を使い分け晶の行動を監視した。

乱暴で今時の若者風のタクヤ、慎重で穏やかな真左人……効果は絶大であった。