貴子の視線には全てを飲みこむ様な炎と、あの時の刑事の後姿が重なって写っていた。

あの時、本当は自分が義光を突き落として殺害したと言ってもよかったのだ。

いや……言うべきだったのかもしれない。

警察が証拠もなく事件か事故かを判断しかねているという事さえ聞かなければ……事件だと……誰かに突き落とされたのだと断言してくれれば貴子は自分が犯人だと言うもりだったのだ。


守るべき物の為に……布団をかぶり涙を流しながら自分を守ろうとしてくれた幼い拓海の為に……。