「ご主人の司法解剖の結果ですがアルコールは検出されませんでした」

「えっ……」

「つまり飲んでなかった。シラフだったという事です。その状態で転落死したんですかねえ?」

「そんな事私に聞かれても……」

刑事の視線に気圧された様に下を向きながら貴子は微かな声で呟いた。

「ご主人は階段から転落して即死した訳じゃありません。だから死亡時刻は病院のベッドの上です。よって正確な転落した時間は今のところわかりません」

「……」

「階下の住民にも聞きましたが悲鳴の類は聞いてません。しかし流れ出た血痕が転落してすぐに流出したものだとすれば、その凝固具合から、転落したのは午前3時前後と推定されました。奥さんその時間に、あなたのアリバイを証明出来るものはありますか?」