紅蓮の炎を前にして貴子は、こうなるのが分かっていたかのように身じろぎもしなかった。

ホースを持った消防団員に突き飛ばされ転倒しても視線は炎から離れない。

路上に倒れかかったまま貴子は十数年前の事を思い出していた。

あの日、義光の臨終を見届けた数日後に会った刑事は鋭い視線で貴子を問い詰めたのだ。