「逃げるの……早く一緒に!」

「逃げる?晶の所にも来たの?」

「えっ?……どういう意味」

「……」

言いかけた真澄の言葉は、傍を駆け抜けた消防車のサイレンに掻き消された。
続いて火災を知らせるサイレンが街中に響き渡る。

反射的に二人が振り向いた先、数百メートルの地点から真っ赤な炎が立ち上がるのが見えた。

「う、うちの方向じゃない?」

言うやいなや晶が走り出す。
さっきまで走り続けてきた真澄は慌てて後を追おうとしたが、みるみる間に引き離されてしまった。

「待って晶!……あのね……」

しかし真澄の言葉は晶に届かず、ぞろぞろと出てきた野次馬にその姿さえ見えなくなってしまった。