この暗い路地……早希が一人で死んでいった暗いこの場所をライトもつけずに自転車でこちらに向ってくる。

街灯が逆光で分かり辛いが、プロレスラーのような真っ黒い覆面。

それは何のためらいも見せずに真っ直ぐ真澄に向ってきた。

「えっ?」

思わず足を止める。その人物は右手に大きな光る物を持っていた。それを頭の上まで大きく振りかぶっている。
それが大ぶりのサバイバルナイフだと気づいた時には自転車は真澄の僅か数メートル手前まで来ていた。

(早希を殺した奴だ!)

何故だかは分からないがそう直感した。
同時にこのままでは間違いなく自分も殺されるとも思った。

早希を殺した殺人鬼に自分まで……目の前にナイフが迫った瞬間、真澄は死を覚悟した。