しばらくの間、晶はそれが夢だと気づかなかった。

何度も繰り返される事故の瞬間のスロー再生。
自分に向かってきた車に轢かれると思った瞬間、隼人に突き飛ばされ、それでも間に合わなく宙を舞う自分の体。

まるで無重力のように晶は空を飛んだ。
そして最初から始まる事故の瞬間。

(私死んだのかなあ……だから何回も事故の瞬間を……)

夢の中で妙に冷静に考えながら晶は何度も空を飛んでいた。

(隼人が突き飛ばさなかったら、まともにぶつかってた……隼人が助けてくれた)

夢の中で晶は隼人に感謝していた。

(あっ、でも私死んじゃったかもしれないだ……駄目じゃない隼人、彼女なんだから守ってくれなきゃ)