「おい拓海、新婚早々愛人と出勤か」

張りのある太い声に二人が振り向くと拓海の同僚教師である穂積雄大（ほずみ　ゆうだい）がニヤニヤしながら立っていた。

「晶ちゃん、そんな弱々しい男やめて俺にしなよ」

「いやよ私は拓海さんが好きなの」

「やめろよ二人とも！回りが見てるだろ」

雄大と一緒になってふざける晶に拓海は慌てて組んでいた腕を外した。

「いいなぁ拓海は。家には綺麗な新妻、実家には可愛い愛人、どっちか譲ってくれ」

「雄大だって誕生日とかに女生徒から色々貰ってたじゃないか」

「そうなの？穂積さん教え子に手出してるんだ！最低」

今度は晶にからかわれ逆に慌てる雄大を見ながら拓海は複雑な心境だった。

口ではこうやって軽口ばかりの雄大だが実は妹の晶を好いているらしい。