今度は這って進んでいた為、血まみれになっていた左手の手首から先が一瞬にして吹っ飛んだ。

手首から噴水のように血しぶきが舞い上がり早希の顔を赤く染める。

「手……私の手……」

もはや痛み等感じないほどにパニックになった早希は剥き出しになった手首を地面に突き立てて必死で逃げた。

(もう少し……あの角まで……隼人さん助けて!)

多量の出血と恐怖によるショックで早希には角の向こうに隼人や晶、真澄、それに両親や礼一までもが立って待ってくれているような幻覚を見た。

(ごめんね晶……ごめんね真澄……)

しかし実際には倒れてからほんの数十センチしか進んでいなかった。

微かな白煙をあげ黒光りする物体が再び乾いた音をたてる。
しかし早希がその音を聞く事は二度となかった。