隼人も早希の事を詳しく知らないだろう。
なのにこんなに好きになってしまったのは、それが経済的なものや、付き合ってからの心地よい生活を求める「優しさに惚れた」という名の打算では無い、純粋に好きだという感情だと早希は思っていた。

隼人が自分を選ぶかどうか……そんな事はもうどうでもよかった。

ただ自分が初めて一目ぼれし、純粋に好きだと思える相手に巡り合えたのだ。

自分の気持ちだけはどうしても隼人に伝えなければ先に進めないと早希は思った。
たとえそれが晶を傷つける事になったとしても……。

次の角を曲がれば国道である。そうすればタクシーがつかまるだろう。

そう思った瞬間、何か乾いた音がして早希は右膝の裏を何かで殴られたような衝撃を受け前へ崩れ落ちた。

「……!」

何が起こったのか分からず声も出ない。