「そんな訳ないだろ、関口君に見られたらどうするんだよ」

妹が高校の時から交際している関口隼人の逞しい体格を思い出し拓海は慌てた。

「気にしなくていいよ、あんな奴」

「喧嘩でもしたのか」

一瞬曇った妹の表情に拓海は心配になって眉をひそめた。

「別に……でも付き合って３年も経つとさ、何だかだらけちゃって」

「そんなもんかなぁ」

「お兄ちゃんは新婚だから分かんないよ。お義姉さん綺麗だし」

「ああ綺麗だよ。俺には勿体ない」

「朝から言うねぇ」

晶の恋人の隼人とは違って拓海は身長こそ高いものの痩せていて肌は青白く少しひ弱な感じがした。

それでも父の居ない北条家にとっては独立して出て行ったとはいえ唯一の男である。

晶にとっても母の貴子にとっても家族としての存在以上に拓海は大切な男であった。