礼一は早希のクラスメート数人にも家庭教師をしていたようだが、決して早希をお嬢様として見ずに、皆と訳隔てなく公平に接してくれた。

早希が宿題をやらなければ厳しく怒ったし、何時ものように高級腕時計をプレゼントしても彼は受け取らなかった。

小山医院の娘としてではなく、杉原建築の孫娘としてでもなく、17歳の一人の少女として接してくれる礼一に、早希がいつしか惹かれていったのも無理はなかったかもしれない。

おかげで学校の成績はグングンあがった。礼一に誉めて欲しい……あの頃の早希の願いはそれだけだった。

勿論、それまでにも男性と付き合った事はある。

いずれも男の方から告白されて断る理由が無かったからだった。

だから当然長続きしない。男はやがて着せ替え人形のように自分の意志を持たない早希に飽き去っていった。