光輝は再び何も聞かずに昨日の倍の1万円札を手渡した。

何を買うのか聞いてほしかった……欲しい物があるなら一緒に買いに行って欲しかったし、それより何度も金をねだる自分を叱ってほしかった。

その時に早希は、光輝にとって自分も、この1万円札も同じなのではないか……どちらも同じモノ……という思いが溢れ出した。

それ以来早希は家族に心を開いていない。
大学に入った時も自立心を養うために一人暮らしをしたいという早希の願いを両親はあっさり許した。

両親にとっては忙しく時間がとれない自分達に出来る精一杯の愛情のつもりだったのだが、早希は自分が必要とされていない寂しさを感じずに入られなかった。

母親に似た大きな瞳、綺麗な肌、美しい黒髪。父親から引き継いだ頭脳と運動神経……物心ついた時から早希の周りには常に人垣があった。