忙しい両親は時間と愛情の代わりに、ありとあらゆる物を早希に与えた。

高校生だったある日、早希は父親に小遣いをねだった。

特に欲しい物があったわけではない。ただ両親との会話のきっかけが何かをねだるという事しか思い浮かばなかったのである。

毎月使い切れない程の金銭を与えられていた早希だったが父親の光輝は何も聞かずに1万円札数枚を早希の手に握らせた。

早希は友達を呼んでブティックに行き洋服を買った。

自分の着る服ではない。
友達の服である。

両親から抱えきれないほどの物を与えられて育った早希にとって友情を示す方法は何かを与える事だったのである。

翌日、早希は再び光輝に小遣いをねだった。自分の財布には毎月の分の残りが使い切れずに余っていたが、それでも父にねだったのである。