「離婚なんかしないよ。悪いところがあったら治すから、言ってくれよ、もっと良い夫になるから」

「分からないわよそんなの……」

そう言って利那は泣き崩れた。肩を抱こうとする拓海の手を払いのける。本当は拓海の事が好きでたまらないのに素直になれない自分が嫌だった。

「知らず知らずに傷つけてゴメン……今夜は引き下がるよ。ずっと部屋で起きてるから許してくれるんなら来てくれ」

そう言って拓海は背をむけた。肩を落とした様子が痛々しい。

(ごめんなさい……)

その一言が言えなくて利那は泣きはらした目を拓海から逸らした。

自分はどうしてこうなんだろう……リストカットした時に何かが本当に死んでしまったのかもしれない。

書斎のドアが閉まる音を確認してから、利那はようやく泣き止んだ。