生活は小学校の教師をしていた母の貴子が実質的に支えていた。
飲んでは暴れ家族に暴力をふるう父から逃げ回っていた記憶が25才になった今でも拓海を苦しめる。
明るく開放的な妹の晶と違い、神経質で内向的な性格だった為、母の貴子から性別が違って生まれて来たのでは?とよく冗談を言われた。
だから拓海が10才の時に酔った父がアパートの階段から転落死した時は心底ホッとしたのを昨日の事のように覚えている。
そんな拓海も成長して母と同じ教職の道を選んだ。
今は母校の蓬莱学園高校で数学を教えている。
妻の利那は一つ年下。同じ高校で事務員をしていた少し陰のある美人だ。
昨秋に結婚したばかりで自宅の隣にローンで家を建て二人で暮らしている。
「もうこんな時間か……学校に行かなくちゃ」
時計の針を見て拓海はため息をついた。
「朝ご飯は?」
「いらない、遅刻しちゃうよ」
名残惜しそうにする利那の手を振りほどいて拓海はベッドから下りた。
最近疲れ気味で熟睡したためしがない。
鏡を覗き込んだ拓海は自分が段々と死んだ父に似てきたような気がして身震いした。
飲んでは暴れ家族に暴力をふるう父から逃げ回っていた記憶が25才になった今でも拓海を苦しめる。
明るく開放的な妹の晶と違い、神経質で内向的な性格だった為、母の貴子から性別が違って生まれて来たのでは?とよく冗談を言われた。
だから拓海が10才の時に酔った父がアパートの階段から転落死した時は心底ホッとしたのを昨日の事のように覚えている。
そんな拓海も成長して母と同じ教職の道を選んだ。
今は母校の蓬莱学園高校で数学を教えている。
妻の利那は一つ年下。同じ高校で事務員をしていた少し陰のある美人だ。
昨秋に結婚したばかりで自宅の隣にローンで家を建て二人で暮らしている。
「もうこんな時間か……学校に行かなくちゃ」
時計の針を見て拓海はため息をついた。
「朝ご飯は?」
「いらない、遅刻しちゃうよ」
名残惜しそうにする利那の手を振りほどいて拓海はベッドから下りた。
最近疲れ気味で熟睡したためしがない。
鏡を覗き込んだ拓海は自分が段々と死んだ父に似てきたような気がして身震いした。