窓がコツコツと鳴ると、俺は横を向いた

助手席側の窓から、久我瑞希の間抜け面がさらに崩れた状態で俺を見つめていた

「きもっ……」

思わず言葉が口から洩れる

これから行く旅行に期待十分、やる気満々といったところか

男の緩んだ顔ほど、気色の悪いものはない

とくにこの男の緩みきった笑みなど、見れたものじゃない

「なんでこんなところにおるん?」

助手席のドアを開けた瑞希が、声をかけてきた

「はっ?
お前が迎に来いって言ったんだろうが!」

瑞希は手招きをしているだけで、車に乗りそうにない

「何だよ」

「久しぶりの実家やろ?
敷居も跨がずに出発するのは、育ててくれたばっちゃんに悪いやろ」

「社会人にもなって人んちに居候している男に言われたくないね」

そうなんだ
久我瑞希は、俺の実家で居候している

中学のときからずっと、俺の隣の部屋で居候をしていた