「私は三つ星レストランから派遣されてきました
清水ほどの腕はありませんが、料理には自信がありますので」

唇の端を持ち上げて、微笑むと持田が椅子に座った

俺の顔をちらっと見ただけで、テーブルの上にある雑誌に手を伸ばした持田は下を向いてしまった

「島で料理をしてくれるスタッフです」

俺がじっと持田を見ていたのを気にしたのか、実花さんが説明をしてくれる

「そうですか。夕食が楽しみです」

俺は実花さんに言うと、横目で料理長を見やった

三つ星レストランのシェフか

そんな人間が煙草を吸うのか?
突然の仕事に、プレッシャーがかかってつい煙草を吸った?

慌てて香水で煙草の臭い消し

煙草は舌を鈍らせる
微妙な味で、レストランの経営が決まるようなところで働いていて、煙草を吸うか?

それとも他人の煙草が衣服についただけか?

「あ、これが酔い止めです
久我さんに渡してください」

「ありがとうございます
きっと喜びますよ」

俺の言葉に、実花さんが頬を赤くした

本当に瑞希が好きなんだな

案外、望みがあるのかも
今回の恋は
瑞希にとって良いモノになるといいが……

あいつはお調子者だからなぁ
なかなか想いが伝わらずに終わることが多いんだよ

俺は実花さんから薬を受け取ると、廊下で実花さんと別れた