「貴方は最初から気になってました

スタッフルームですれ違ったときに、微かに香る硝煙の臭いと、それを隠すようにつけた甘いコロンの香り

一流シェフはそんな臭いは身体からさせないでしょ?
最初は煙草を隠すためかと思ったのですが、煙草ほど強い香りはしなかった

貴方自身、シェフになり切りたいと思っていたために、俺らにコロンの匂いを感づかれたくなくて、わざと遠い位置に座った

己の身体の臭いを知られたくなかった
なぜなら、旅行に参加するために船に乗り込もうとしていたシェフを公園で殺害したから
シェフだとバレたら、旅行が中止になる

だから身元発見を遅らせるように、殺害したシェフの身ぐるみをはがした
違いますか?」


持田が右の口の端を持ち上げて笑うと、鼻を鳴らした


「嫌な奴が旅行者にいたもんだ」


持田の視線が俺からそれた