私は、高森勇介の左の腕を勢い良く引っ張った。
「あの!!あのさ……ありがとう。さっきは、本当にありがとう」
「いえいえ、当然のことです」
驚いた表情の高森勇介は、また笑顔に戻った。
「あんたに会いたかったから、ここにいたの。あんたにお礼が言いたかったから」
顔を見ることはできない。
こんなとき、直ならかわいくお礼が言えるんだろうな。
「本当ですか。僕を探してくれていたんですか。あの……良かったら、10分後、またここに来てくれますか」
高森勇介はそう言って、足早に通路を歩き出した。
10分後、何があるんだろう。
高森勇介、私のことどう思ってるんだろう。
またアイツに会えるんだ。