「大丈夫ですか?」
トイレの前の手すりにつかまったままの私に声をかけた人。
「はい、大丈夫です」
視線を床に落としたまま、軽く振り向いた。
「あ、あれ?先ほどの……」
「あーー、高森!!」
いきなり呼び捨てにしてしまったことよりも、名前を覚えてくれていたことに驚く高森勇介。
「元気になられたんですね!!良かったです。僕の名前覚えてくれたんですね~」
まさか会えるなんて。
目の前で笑う高森勇介の顔を見ていると、私はこの人にどれだけ会いたかったのか……
自分でやっと気付いた。
誰にも心が揺れない私が、ミキオに初めて会ったあの日のようにドキドキしたんだ。
「名札見ただけだよ」
素直になれずにそう言う私に、高森勇介は言った。
「あれからずっと心配していたんですよ。はぁ、良かった良かった!」