「コーヒーのおかわりどうですか」
声をかけてくれたマスター。
ひげが印象的だから何年かぶりなのに、マスターのことは覚えていた。
「お願いします」
頬を伝う涙を、手で拭いた。
ミキオのことを思い出すと、理恵子のことも思い出す。
だから避けていたのかな、
この場所。
いつも
この店では、あの日の記憶を呼び起こしていたから。
理恵子は、私達が病院に着いたときには、もう息を引き取っていた。
理恵子のお母さんの言葉に、そこにいた全員が号泣した。
『理恵子は毎日幸せそうだった。みんなのおかげね。ありがとう』