隣家の主は善吾郎の幼なじみで、喧嘩友達でもある。

湯河原英作といって、善吾郎よりもひとつ年上の偏屈じじいだ。

数年前につれあいの幸子と死に別れ、すっかり黄昏れていたところを武士の情けと善吾郎がなにくれとなく面倒をみてやった。

もっとも、その件に関しては、面倒を見た、いや見ないなどと、双方の見解が食い違っていたりするのだが、年寄りにはよくあることだろう。