「あらあら、なにを怒ってらっしゃるんですか?」

「なんもさ。なんもねぇ」

不機嫌に黙り込む善吾郎を横目で見て、美代は、二人の老人の間で困っている陽一にお盆の上の湯飲みを手渡した。

「甘酒ですよ。一息ついてくださいな」

「は。ありがとうございます」

恐縮して陽一は湯飲みを受け取る。

「英作さんも、ご一緒にいかが?」

笑顔で英作に呼びかける。