善吾郎は手を休め、唇をへの字にひん曲げて英作を見た。

「ほぉ~ん。そったらありがてぇこたぁねぇべな」

善吾郎はいまいましげに唸る。二人は、しばらくにらみ合って、フンと白い鼻息をはき出して互いに背を向けた。

一事が万事、そんな調子だった。