二月になって、英作は息子の俊作に引き取られて行った。

長年住み慣れた家も売りに出してしまったので、もう、ここへ戻ることもないだろう。

善吾郎は、遊びに来いと言って英作を送り出したが、多分、カマクラの中で呑む約束はこの世では果たすことはないだろうとお互いにわかっていた。

わかっていたが、また呑むべ、などと言い交わして、明日にでも再会できるような顔をして別れた。

また呑むべ、という約束は、あの世でまた呑むべ、の省略形なのかもしれない。