古ぼけた木の家々が並び、道路はまだ未舗装の砂利道で、闊歩する馬の馬糞がそこここに転がっていたころ、野良犬が中通りを走り回り、タンポポは咲き乱れ、正午を告げるサイレンが町中に鳴り響いていた。

いがくり坊主だった善吾郎も、やせっぽちだった英作も、自分たちが老いて、この生まれ育った北の地を離れなければならない日が来るなんて考えもしなかった。

トンボの尻尾に藁をくくって走り回ったり、雨の日、水たまりのアメンボを飽かず眺めてずぶぬれになったり、雪で落とし穴をつくって近所のいじめっ子に仕返しをしたりした。

想い出の中の少年時代は、いつも二人だった。

悪いこともいいことも、いつもいっしょだった。