美代が、いつものおっとりした口調で善吾郎を促し、膝の上に大きく広がったモスグリーンのセーターの後ろ身頃を持ち上げた。


「やや! 隣のじじい、まぁたしてるべさ!」


善吾郎は台所の窓を乱暴に閉めると、どすどすと床を踏み抜きそうな勢いで居間に戻ってきた。