俺はその絡みついてくる腕を振り払った
『俺が愛するのは、この世でただ1人だけなんだよ
…それは、お前じゃない』
冷ややかな目線を送りながら静かに言ったら
その女は固まった
『「由香里」っていう子なの?』
その言葉は
再び歩き出そうとした俺を止めるのにとても役立ったに違いない
『私を抱き終わった後だって言うのに…教材室に入ってきた女の子を必死で追いかけて
…『由香里っ!』って叫ぶように言いながら追いかけて…』
私なんか一度も名前で呼ばれたことなんてないのにね
と、ちょっと笑いながら言ったのが振り返らなくても分かった
『私を抱いている時だって…放心状態で
中学の時の方が良かったんだから』
その時気づいた
この女がいつもの語尾を伸ばすような話し方をしていないことに
こいつも…本気なんだ