一瞬


部屋の中が静まり返った






「…いいなずけ?」




今のご時世に許婚なんて…

嘘だろう?





『そうよ!ほら覚えてる?森永さんのところの千秋ちゃん、昔よく遊んでもらったでしょう?』



母さんがいつもよりも数倍うきうきした口調で信じられない名前を口にした





森永千秋(モリナガ チアキ)


俺よりも1つほど上の稜雅の幼馴染だ

昔から稜雅の家に遊びに行くたびに一緒に遊んでいた




だから今更許婚なんて言われたって

恋愛感情もなにもない






『あそこのお嬢さんなら女の子らしくておしとやかだし言う事無いだろう』


親父はまるで自分の手柄だとでも言うような

満足そうな表情で付け足した






おいおい…

千秋をおしとやかだと思っているようじゃあ

親父もまだ甘いっしょ